PDRNとPNは材料を表す名前、リジュランはブランド名です。この違いを押さえると、「何を含むか」と「どの製品を、どう使うか」を分けて読めます。比較レビュー ↗とメーカーのブランド説明 ↗をもとに、名前同士の関係を整理します。

PDRNとPNは分子を表す名前

PDRNはpolydeoxyribonucleotide(ポリデオキシリボヌクレオチド)、PNはpolynucleotide(ポリヌクレオチド)の略です。 どちらも、ヌクレオチドという単位がつながった鎖を指します。PNは広い意味ではDNAとRNAを含む名称ですが、ここで扱う美容・皮膚科の比較文献では、主にDNA由来の分子を指しています。比較レビュー ↗、命名法レビュー ↗

比較レビューでは、PNを相対的に長いDNAの鎖、PDRNをそれより短い鎖として説明しています。ただし、両者を分ける標準化された分子量の境界はなく、文献や商業上の呼び方にも重なりがあります。「PN」「PDRN」という名前だけでは、個別製品の鎖の長さや分子量を確定できません。比較レビュー ↗

2025年の命名法レビューには、分子量の単位であるkDa(キロダルトン)を使い、次のように区切る提案があります。

名称レビューが提案する区切り
PDRN1,500 kDa未満(MW < 1500 kDa)
PN1,500 kDa以上(MW ≥ 1500 kDa)

この提案では、ちょうど1,500 kDaはPNに含まれます。著者らが「Marques Polynucleotide Cutoff」と名付けた命名法の提案であり、業界共通規格ではありません。同レビューは、一部著者の関連企業との雇用・助言関係も開示しています。独立した規格制定機関の決定として読むものではありません。命名法レビュー ↗

材料名・ブランド名・使用経路を別の情報として整理する編集図。製品の同等性や効能は示していません。
材料名・ブランド名・使用経路を別の情報として整理する編集図。製品の同等性や効能は示していません。編集図 · 制作:MIRO編集部

リジュランはブランド名、PNは材料の名前

リジュラン(Rejuran/리쥬란)はPharmaResearchのブランド名で、PNやPDRNの同義語ではありません。 メーカーは、サケ由来PNを用いた医療機器製品を説明しています。2024年のレビューもRejuranを、あらかじめ内容物を充填したシリンジ型のPN製品の例に挙げています。メーカー発表 ↗、2024年レビュー ↗

一方、公式ブランドサイトには「Skin Booster(Cosmetics)」「REJURAN Cosmetics」という化粧品の製品群もあります。そのため、「リジュラン」と書かれているだけでは、成分の詳細、医療機器か化粧品か、注射か塗布かまでは分かりません。ブランド名に続く正式な製品名と製品区分まで確認する必要があります。ブランド公式サイト ↗

ここでメーカー資料を使う目的は、ブランドと製品を識別することです。メーカーによる製品説明を、そのまま独立した効能の証明として扱うことはできません。

メーカーが案内するリジュランの医療機器製品群と化粧品群を分けた編集図。日本での承認や製品間の同等性を示すものではありません。
メーカーが案内するリジュランの医療機器製品群と化粧品群を分けた編集図。日本での承認や製品間の同等性を示すものではありません。編集図 · 制作:MIRO編集部

原料・製品・使い方を分けて比べる

原料は「何から得たか」、材料・成分名は「何を含むか」、製品名は「どの完成品か」、使用経路は「どう使うか」を表す別々の情報です。 表でも、それぞれを分けて整理すると混同を防げます。

比較する名前名前の位置づけ原料・成分について確認できる内容完成品・使い方との関係
PDRNDNA由来の材料名比較レビューは魚類の精子由来と説明塗布用化粧品への配合も文献に登場。名称だけでは使用経路は決まらない
PN広い分子の名称。この比較では主にDNA由来の材料比較レビューはサケ・マスなどの精巣由来と説明後述する人を対象とした比較試験では、注射用の完成品を使用
Rejuranの医療機器製品例ブランドに属する個別製品メーカーはサケ由来PNを使用すると説明レビューに充填済みシリンジ型の製品として登場
REJURAN SYNERGE Skin Booster公式サイトが化粧品群に置く製品「加水分解DNA」の配合目的を「保湿」と表示医療機器製品群やPN注射の研究と区別する

出典:比較レビュー ↗、注射製品を扱うレビュー ↗、メーカー発表 ↗、ブランド公式サイト ↗

表にある「精巣」「精子」は、PNとPDRNを判別する共通ルールではありません。別の命名法レビューは、両者とも主にサケ類の精子細胞から得られると説明しています。原料の由来だけで二つの名前を振り分けることはできません。精製方法、分子量の分布、配合、完成品の情報を分けて読む必要があります。命名法レビュー ↗

塗布用化粧品については、比較レビューに「sodium DNA」「hydrolyzed DNA」という名称も登場します。ただし、表示名が関連しているだけでは、注射製品と同じ組成や働きがあるとは判断できません。比較レビュー ↗

日本での位置づけについて、公式サイトはRejuran・I・S・HB plusの案内に「未承認医療機器」と表示しています。これはメーカーの日本向け表示として確認された情報です。本稿では日本の規制当局資料との独立した照合まではできておらず、ブランド全体や化粧品群の承認状況を一括して判定するものではありません。ブランド公式サイト ↗

注射と塗布では、根拠を分けて読む

PN注射の研究から、PDRNやPNを含む塗る化粧品にも同じ効果があるとは言えません。 分子の働きの説明と、人が特定の完成品を特定の方法で使った結果は、別の根拠です。

比較レビューはPDRNについて、細胞の受容体の一つであるA2A受容体に関わる作用や、分解された核酸の構成要素を再利用する「サルベージ経路」を説明しています。一方、2024年レビューは、PNにもPDRNと似た仕組みがあるという考えを仮説として扱い、直接の科学的実証とは区別しています。こうした仕組みの説明だけで、特定の塗布用化粧品の効果を証明することはできません。比較レビュー ↗、2024年レビュー ↗

人を対象とした研究の例として、Leeらの試験では27人の目の周囲に、片側はPN、反対側は非架橋ヒアルロン酸(HA)を、2週間間隔で計3回注射しました。どちら側に何を注射するかを無作為に割り付けた比較試験です。以下は原論文の抄録が報告する結果です。試験抄録 ↗

評価項目抄録に記載された群間の結果
見た目の評価尺度・全般的な美容変化の尺度統計学的に有意な差なし
肌の弾力・水分の改善率両群とも時間とともに低下したが、PN群の改善率が高かった
肌の粗さ・毛穴体積の改善率PN群の改善率が高かった
真皮密度の改善率統計学的に有意な差なし

出典:Leeらの試験抄録 ↗

結果は評価項目によって異なるため、「すべて差がない」「PNが一律に優れる」のどちらにもまとめられません。この試験はPNとHAの注射同士の比較であり、PNとPDRNの比較でも、注射と塗布の比較でもありません。

別の系統的レビューの表は、この試験を韓国人女性27人、Rejuran PN 20 mg/mL、観察期間28週と整理しています。この製品・対象・期間の情報はレビューによる報告であり、本稿で原試験の全文を確認した情報ではありません。系統的レビュー ↗

リスクについて、同レビューは局所の痛み、腫れ、かゆみ、あざ、赤み、一時的な刺激を挙げ、通常は1週間以内に解消したとまとめています。Lee試験の表には、赤み・かゆみ・一時的な刺激がそれぞれ3.7%と記載されています。この数値を全製品の発生率に広げたり、「1週間で必ず回復する」と個人の経過を保証したりすることはできません。系統的レビュー ↗

Lee試験の抄録では、重大な有害事象は報告されていません。ただし、限られた人数と観察期間で報告がなかったことから、まれなリスクや長期・反復使用の安全性まで確定することはできません。試験抄録 ↗

研究全体を読む際にも注意点があります。系統的レビューは9研究・219人を集計し、研究の質を低い、または中程度と評価しています。ただし、本文には撤回された論文を除外したと記載されている一方、表と結果にはPakらの2014年研究が登場します。このPN対HA臨床試験・前臨床動物研究には2016年の撤回告知があり、レビューの選別方法の説明と実際に掲載された研究との間に不整合が残ります。系統的レビュー ↗、撤回告知 ↗

撤回告知が示す理由は、利益相反の誤った開示と、研究費スポンサーに関する不正確な告知です。結果の捏造や製品による健康被害が理由だったと付け加えることはできません。9研究・219人という集計や有害事象のまとめも、撤回研究を掲載したレビューによる報告として読む必要があります。撤回告知 ↗、系統的レビュー ↗

同レビューは、著者による美容事業の所有や、Mastelli・Dermafocusに関連する研究開発、教育、講師などの役割も開示しています。また、両社は本研究に関与せず、助成金も受けていないと記しています。研究の質や掲載された研究の問題も含め、現時点の資料をPN全般の効能・安全性の確定的な証明とすることはできません。系統的レビュー ↗

出典と確認日

記述の根拠をたどれるよう、参照先と確認日を掲載しています。

  1. Comparison of Polynucleotide and Polydeoxyribonucleotide in Dermatology: Molecular Mechanisms and Clinical Perspectives — PMC12388916/PMID 40871045、BioC全文 ↗確認日 2026-11-02 · 出典1
    確認に使った記述
    “no standardized criteria have been established to delineate molecular weight thresholds that clearly distinguish PN from PDRN”; “sodium DNA or hydrolyzed DNA”
  2. Polynucleotides in Aesthetic Medicine: A Review of Current Practices and Perceived Effectiveness — PMC11311621/PMID 39125793、BioC全文 ↗確認日 2026-11-02 · 出典2
    確認に使った記述
    “notable examples including Rejuran”; “both of which are offered in prefilled syringes”; “However, up to date, this has not been scientifically demonstrated.”
  3. REJURAN公式サイト — 製品群・日本向け表示 ↗確認日 2026-11-02 · 出典3
    確認に使った記述
    “Skin Booster(Cosmetics)”; “REJURAN ® Cosmetics”; “Rejuran ® SYNERGE Skin Booster *1「加水分解DNA」 配合目的:保湿”; “リジュランは現在日本国内において医薬品医療機器等法上、未承認医療機器です。”
  4. PharmaResearch Launches Rejuran® at Aesthetics 2023 in Australia — 2023年8月17日メーカー発表 ↗確認日 2026-11-02 · 出典4
    確認に使った記述
    “Rejuran®, the flagship brand of Pharma Research”; “Rejuran® is a medical device manufactured with polynucleotide (PN), a salmon-derived regenerative substance”
  5. The Effectiveness of Polynucleotides in Esthetic Medicine: A Systematic Review — PMC11845969、BioC全文・表 ↗確認日 2026-11-02 · 出典5
    確認に使った記述
    “Nine studies, of low and moderate quality”; “219 patients”; “Rejuran PN 20 mg/mL”; “Duration: 28 weeks”; “Erythema (3.7%),pruritus (3.7%),transient irritation (3.7%)”
  6. From Polydeoxyribonucleotides (PDRNs) to Polynucleotides (PNs): Bridging the Gap Between Scientific Definitions, Molecular Insights, and Clinical Applications of Multifunctional Biomolecules — PMC11764130、BioC全文 ↗確認日 2026-11-02 · 出典6
    確認に使った記述
    “this narrative review proposes a standardized structure-based nomenclature”; “Marques Polynucleotide Cutoff”; “small- and medium-chain polymers (MW < 1500 kDa)”; “longer-chain polymers (MW ≥ 1500 kDa)”
  7. Comparison of the effects of polynucleotide and hyaluronic acid fillers on periocular rejuvenation: a randomized, double-blind, split-face trial — PMID 32248707、BioCタイトル・抄録のみ ↗確認日 2026-11-02 · 出典7
    確認に使った記述
    “A total of 27 subjects”; “thrice with two-week intervals”; “The improvement rates of roughness and pore volume were higher in the PN group”
  8. Notice of Retraction: Pak CS, et al. A Phase III, Randomized, Double-Blind, Matched-Pairs, Active-Controlled Clinical Trial and Preclinical Animal Study… — PMC4729519、2016年撤回告知、BioC全文 ↗確認日 2026-11-02 · 出典8
    確認に使った記述
    “J Korean Med Sci 2014; 29(Suppl 3): S201-S209”; “an impaired publication of conflict of interest by wrong disclosure and incorrect notification of funding sponsor.”

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更新と訂正

この公開版: 2026.11.04 / 9e3f46702897

  1. 2026.11.04 · 初版 · 9e3f46702897
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